なぜ、考えすぎると身体まで疲れるのか? ― 脳と身体のエネルギーの使い方

2026年11月03日 23:42


「今日はそれほど身体を動かしていないのに、なんだか疲れた」

そんな経験はありませんか?

仕事で考えることが多かった日。

人間関係で悩んでいた日。

何かを決断しようと、あれこれ考え続けていた日。

身体をたくさん動かしたわけではないのに、夕方になるとぐったりしてしまう。

実は、こうした疲れには、脳と身体の密接なつながりが関係していると考えられます。

今回は、「考えること」と「身体が疲れること」の関係について、脳科学や自律神経、東洋医学の視点も交えながら考えてみましょう。

① 考えることにもエネルギーが必要

私たちの脳は、何もしていないときでも活動を続けています。

呼吸や体温調節、身体の状態の把握、記憶の整理など、意識していないところでもさまざまな働きが行われています。

そして、何かを考えたり、判断したり、集中したりするときには、それに応じた神経活動が生じます。

ここで興味深いのは、脳がもともと多くのエネルギーを消費している器官だということです。

成人の脳は、安静時でも身体全体のエネルギー消費の約20%を占めるとされています。

ただし、難しいことを考えたからといって、脳全体のエネルギー消費が急激に増えるわけではありません。

それでも、長時間集中したり、複雑な判断を繰り返したりすると、私たちは疲労を感じることがあります。

つまり、考えすぎによる疲れは、単純にエネルギーを大量消費した結果というだけでは説明できないのです。

では、ほかに何が関係しているのでしょうか?

② 脳が疲れると、身体まで疲れる?

私たちは、考えることに集中しているとき、さまざまな情報を処理しています。

例えば、

- 次に何をすればいいのか考える
- 過去の出来事を振り返る
- 相手の気持ちを想像する
- 失敗しないように注意する
- 複数の選択肢から答えを探す

こうした活動には、注意力や記憶、判断などの働きが関係しています。

特に、長時間にわたって注意や判断を必要とする作業を続けると、精神的な疲労が生じることがあります。

これを「メンタルファティーグ(精神的疲労)」と呼びます。

精神的疲労が強くなると、集中力が低下したり、物事に取り組むことが億劫になったりする場合があります。

また、身体を動かすことに対しても、普段より負担を大きく感じることがあります。

つまり、身体そのものを酷使していなくても、脳の疲労感が身体の重さやだるさとして現れることがあるのです。

ただし、こうした疲労感の仕組みには、まだ十分に解明されていない部分もあります。

③ 考えすぎると、身体が緊張することも

もう一つ注目したいのが、自律神経との関係です。

自律神経は、心拍や呼吸、消化、血管の働きなどを調節する神経系です。

私たちが何かを心配したり、不安を感じたりしているときには、身体にもさまざまな反応が起こります。

例えば、

- 肩や首に力が入る
- 呼吸が浅く、速くなる
- 心拍数が増える
- 胃腸の調子が変化する
- なかなか寝つけなくなる

といった反応です。

もちろん、考えること自体が悪いわけではありません。

問題となりやすいのは、心配や緊張を伴う思考が長く続き、身体も十分に休まらない状態です。

例えば、仕事が終わって家に帰っても、頭の中では仕事のことを考え続けている。

身体は休んでいるつもりでも、気持ちはまだ仕事中。

そんな状態では、筋肉の緊張や睡眠への影響などを通して、疲れが残りやすくなることがあります。

頭の中で起こっていることが、身体の状態にも影響している。

これは、心と身体が互いに関係し合っていることを示す身近な例といえるでしょう。

④ 東洋医学では「思」と「脾」の関係を考える

ここで少し、東洋医学の視点も取り入れてみましょう。

東洋医学の陰陽五行では、感情と身体の働きを関連づけて捉える考え方があります。

その中で、今回のテーマと関係が深いのが「思」と「脾」です。

五行では、思は土に属する感情であり、脾と関連づけられています。

東洋医学における脾は、現代医学の脾臓そのものではなく、主に飲食物から栄養を取り入れ、身体を養う働きなどを含む概念です。

伝統的には、思い悩むことが過度になると、脾の働きに影響すると考えられてきました。

例えば、心配事が続くと食欲が落ちたり、胃腸の調子が気になったりすることがありますよね。

こうした現象を、東洋医学では「思」と「脾」の関係から捉えることがあります。

一方、現代医学では、ストレスと消化機能の関係について、自律神経や脳腸相関などの仕組みから研究が進められています。

両者は同じ理論ではありませんが、心の状態と身体の働きを切り離さずに考えるという点では、共通する視点を見いだすことができます。

⑤ 考えすぎて疲れたときは、どうすればいい?

では、頭の中が忙しくなり、身体まで疲れてしまったときには、どのように過ごせばよいのでしょうか?

ここでは、日常生活で取り入れやすい方法を3つ紹介します。

1.身体を軽く動かしてみる

考え事が続いているときには、同じ姿勢で長時間過ごしていることもあります。

そんなときは、一度立ち上がって歩いてみるのもよいでしょう。

軽い散歩やストレッチなどは、気分転換や筋肉の緊張を和らげるきっかけになります。

特に、外に出て自然の景色を眺めながら歩くことは、考え事から少し注意を離す機会にもなります。

2.呼吸を観察してみる

考え事をしているとき、自分がどのような呼吸をしているか意識したことはありますか?

呼吸が速くなっていたり、無意識に息を止めていたりすることもあるかもしれません。

そんなときは、無理に大きく息を吸おうとするのではなく、まずは今の呼吸を観察してみましょう。

息を吸っている。

息を吐いている。

胸やお腹が動いている。

そうした身体の感覚に注意を向けることで、頭の中の考え事から、今の身体へと意識を移すきっかけになります。

3.考えることから離れる時間をつくる

私たちは、何か問題があると、考えることで解決しようとします。

もちろん、それが必要な場面もあります。

しかし、考え続けることが、必ずしも良い答えにつながるとは限りません。

ときには、

「今は考えなくてもいいかな」

と、いったん距離を置いてみることも大切です。

好きな音楽を聴く。

お茶を飲む。

外の景色を眺める。

何気ない日常の中にも、頭を休ませるきっかけはあります。

大切なのは、無理に思考を止めようとすることではなく、考えること以外にも意識を向けられる時間をつくることなのかもしれません。

⑥ 身体の疲れは、身体だけの問題とは限らない

身体が疲れたと感じるとき、私たちはつい筋肉や体力の問題を考えがちです。

しかし、疲労感には、睡眠や栄養、活動量だけでなく、心理的な負担や生活環境など、さまざまな要因が関係しています。

例えば、首や肩がこっているとき。

長時間のデスクワークによる姿勢や筋肉への負担だけでなく、仕事中の緊張やストレスが関係している場合もあります。

反対に、身体の不快感が続くことで、気持ちが落ち着かなくなることもあるでしょう。

心と身体は、一方通行ではなく、互いに影響し合っています。

だからこそ、身体の状態を考えるときには、身体だけでなく、その人がどのような毎日を過ごしているのかにも目を向けることが大切だと考えています。

なお、疲労が長く続く場合や、休んでも改善しない場合には、貧血や甲状腺の病気、睡眠障害などが関係していることもあるため、医療機関での相談も大切です。

まとめ|頭が忙しいときこそ、身体に目を向けてみる

考えすぎると身体まで疲れる。

それは、決して不思議なことではありません。

私たちの脳と身体は、常に情報をやり取りしながら働いています。

考えることが続けば、精神的な疲労が生じることもありますし、緊張やストレスを伴えば、筋肉や呼吸、睡眠などにも影響することがあります。

そんなときは、頭の中だけで何とかしようとせず、身体の感覚に目を向けてみるのも一つの方法です。

呼吸を感じる。

少し歩いてみる。

肩の力が入っていることに気づく。

それだけでも、自分の状態を知るきっかけになります。

考えることも大切。

そして、考えることから少し離れる時間も大切。

心と身体の両方に、ちょっとしたスペースをつくってみませんか?

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当サロンでは

当サロンでは、身体の状態だけでなく、日々の生活習慣や心身の緊張にも目を向けながら、一人ひとりに合わせた施術を大切にしています。

理学療法士としての身体の評価に加え、オステオパシーや東洋医学の考え方も取り入れながら、心と身体に余白をつくるお手伝いをしています。

「身体がなんとなく重い」

「忙しい毎日で、なかなか力が抜けない」

そんなときには、一度ご自身の心と身体の状態に目を向けてみませんか?

心と身体にスペースをつくる。

日常を、もう少し軽やかに楽しむために。

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