秋は“手放す”季節? ―陰陽五行から考える、心と身体の余白

2026年09月28日 19:48



9月も終わりに近づき、少しずつ秋の気配が深くなってきました。

夏のような強い日差しが少しずつ落ち着き、日が暮れる時間も早くなる。

自然界を見渡してみても、春から夏にかけて勢いよく広がっていたものが、少しずつ静かな方向へと変化していきます。

そんな秋は、

「何かを増やすこと」よりも、「少し手放すこと」

を考えてみるのに、ちょうどいい季節なのかもしれません。

今回は陰陽五行をヒントに、秋と「手放すこと」、そして心と身体の「余白」について考えてみたいと思います。

春夏の「広がる」から、秋冬の「収める」へ


東洋医学の基本となる「陰陽」の考え方では、自然界はずっと同じ状態にあるのではなく、陰と陽が移り変わりながら循環していると考えます。

春になれば植物が芽吹き、
夏には枝葉を大きく広げる。

これは、外へ外へとエネルギーが広がっていくような季節です。

そして夏至を越え、秋へ向かうにつれて、今度は少しずつ「陰」の性質が増していきます。

秋になれば実りを迎え、やがて葉を落とし、冬へ向かって自然界は静かになっていく。

外へ広げ続けるのではなく、

広がったものを収め、次の季節へ備えていく。

自然には、そんなリズムがあります。

では、私たち人間はどうでしょうか。



私たちは「足すこと」を考えすぎているのかもしれない


なんとなく疲れている。

そんなとき、

「運動を始めよう」
「ストレッチをしよう」
「食事を改善しよう」
「もっと睡眠について勉強しよう」

と、私たちはつい「何をすればいいのか?」を考えます。

もちろん、新しい習慣を取り入れることが役立つ場合もあります。

でも、

すでに仕事や家事で予定がいっぱいなのに、
さらにセルフケアを増やして、

「これもやらなきゃ」

となってしまったらどうでしょう。

心と身体を整えるはずだったものが、いつの間にか新しい「やること」になってしまうこともあります。

そんなときは、

「何を始める?」ではなく、「何を減らせる?」

と考えてみてもいいのかもしれません。

秋の五行「金」から考えてみる


陰陽五行では、秋は「金」に分類されます。

そして「金」と関係が深い五臓が「肺」です。

前回の記事では、

秋 ― 金 ― 肺 ― 悲・憂

というつながりから、秋の物寂しさと心身について考えてみました。

今回は、もう少し違った角度から「肺」を見てみます。

呼吸では、

吸うことだけでなく、
吐くことも必要です。

ずっと吸い続けることはできません。

息を吐き、
そしてまた、新しい空気を吸う。

この当たり前の繰り返しを眺めていると、

「出すこと」と「取り入れること」は、ひとつの循環になっている

ことに気づきます。

もちろん、これは「肺には物事を手放す医学的な作用がある」という意味ではありません。

ただ、秋や肺という東洋医学の世界観を、自分の暮らしを見直すためのひとつのヒントとして眺めてみる。

そうすると、

「最近、私は取り入れることばかりになっていないかな?」

と、自分に問いかけるきっかけになります。


「手放す」は、捨てることだけではない


「手放しましょう」

と言われると、

物を捨てることや、人間関係を断つことなど、大きな変化を想像するかもしれません。

でも、ここでいう「手放す」は、もっと小さなものでいいと思います。

たとえば、

予定をひとつ減らす。

スマホを見る時間を少し短くする。

「今日中に全部やらなければ」をやめてみる。

身体に入っている余計な力に気づいて、ふっと抜いてみる。

ゆっくり息を吐いてみる。

あるいは、

何もしない時間を少しだけつくってみる。

手放すとは、必ずしも「大切なものを捨てること」ではありません。

むしろ、

今の自分に本当に必要なものを選び直すこと

とも考えられるのではないでしょうか。

心と身体にも「スペース」が必要なのかもしれない


予定がいっぱい。

頭の中もいっぱい。

スマホから入ってくる情報もいっぱい。

そして、

身体にも知らないうちに力が入っている。

私たちは、思っている以上に「いっぱい」の状態で毎日を過ごしているのかもしれません。

そんなときに必要なのは、

さらに何かを足すことではなく、

ほんの少し、スペースをつくること。

予定と予定の間にスペースをつくる。

考えごとの間にスペースをつくる。

呼吸にスペースをつくる。

身体の緊張に気づいて、力を抜ける場所を探してみる。

そうして少し余白が生まれると、

「本当は疲れていたんだな」

「今日は静かに過ごしたいんだな」

「これ、意外と好きだったんだな」

と、それまで忙しさの中に隠れていた自分の感覚に気づくことがあります。



今日、ひとつだけ「やらないこと」を決めてみる


秋の養生として、

何か新しいことを始めるのではなく、

今日はひとつだけ、

「やらないこと」

を決めてみるのも面白いかもしれません。

寝る前の10分だけスマホを見ない。

今日じゃなくてもいい仕事は明日にする。

疲れているなら、予定をひとつ減らしてみる。

あるいは、

何かをしようとせず、窓を開けて秋の空気を感じながら、ゆっくり呼吸してみる。

ほんの小さなことで十分です。

大切なのは、

「何を減らすのが正解なのか?」

を探すことではなく、

「今の自分には、何が必要だろう?」

と一度立ち止まってみることだと思います。

余白があるから、新しいものが入ってくる



春夏には、外へ向かって広がる。

秋冬には、少しずつ内側へ収めていく。

自然界が一年を通して変化するように、私たちも一年中、同じペースで走り続けなくてもいいのかもしれません。

何かを始めることも大切。

頑張ることも大切。

でも、ときには、

減らす。

休む。

吐き出す。

立ち止まる。

そんな時間もまた、自分を整えていくための大切な養生になるのではないでしょうか。

「手放す」とは、何かを失うことではなく、大切なものが入ってくるスペースをつくることなのかもしれません。

この秋、

「もっと何かをしなければ」と思ったときこそ、

少しだけ立ち止まって、

「今の自分には、何を足すかではなく、何を手放すと心地いいだろう?」

と問いかけてみてください。

そこにできた小さな余白から、

今まで気づかなかった自分の感覚が、ふっと顔を出してくれるかもしれません。

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