「何もしていないのに疲れる」のはなぜ?―身体の“見えない頑張り”と疲れやすさの関係

2026年10月13日 00:59



「今日はそんなに動いていないはずなのに、なんだか疲れた」

「デスクワーク中心なのに、仕事が終わるとぐったりする」

「休日はゆっくりしていたのに、疲れが取れた気がしない」

そんな経験はありませんか?

疲れるというと、運動や肉体労働など、身体をたくさん動かしたときをイメージするかもしれません。

でも、私たちの身体は、動いているときだけ働いているわけではありません。

座っているときも、立っているときも、考え事をしているときも。

さまざまな働きによって、今の状態を保っています。

今回は、そんな**「目に見えにくい身体の頑張り」**に注目してみたいと思います。

 何もしていないようで、身体は働いている

たとえば、椅子に座っているとき。

自分では何もしていないつもりでも、身体の中ではさまざまな働きが起こっています。

頭を支える。

姿勢を保つ。

呼吸を続ける。

体温を調節する。

周囲の情報を受け取る。

こうした活動は、意識していなくても続いています。

特に姿勢を保つためには、筋肉や神経系による細かな調整が必要です。

つまり、「動いていないこと」と「身体が働いていないこと」は同じではないのです。

 身体の緊張が、疲れやすさに関係することも

ここで少し、自分の身体を観察してみましょう。

今、肩に力は入っていませんか?

奥歯を噛みしめていませんか?

お腹に力を入れ続けていませんか?

こうした筋肉の緊張は、必ずしも悪いものではありません。

姿勢を保ったり、身体を安定させたりするために必要な働きでもあります。

ただし、必要以上の緊張が長く続くと、筋肉の疲労感や不快感につながることがあります。

たとえば、軽い荷物でも長時間持ち続けていると、腕が疲れてきますよね。

身体の緊張も、似たような視点から考えることができます。

大切なのは、

「緊張していること」よりも、「緊張と弛緩を切り替えられているか」

というところなのかもしれません。

 「同じ姿勢でいること」も、身体にとっては仕事

デスクワークなどで長時間座っていると、腰や肩が重く感じられることがあります。

これは、必ずしも姿勢が悪いからとは限りません。

どんなに整った姿勢でも、同じ状態を長く続ければ、特定の筋肉や組織に負担が集中することがあります。

身体は本来、さまざまな姿勢や動きを使い分けられます。

座る。

立つ。

歩く。

身体を伸ばす。

向きを変える。

こうした動作によって、身体にかかる負担も変化します。

そのため、ひとつの「正しい姿勢」を維持しようと頑張るより、

いろいろな姿勢を選べること

に目を向けてみるのもよいでしょう。

 身体だけでなく、脳もエネルギーを使っている

身体を動かしていなくても、頭をたくさん使った日は疲れを感じることがあります。

仕事の段取りを考える。

人間関係に気を配る。

失敗しないよう注意を向け続ける。

次に何をするか判断する。

こうした認知的な活動にも、脳の働きが必要です。

ただし、頭を使った疲れを単純に「脳のエネルギー切れ」と考えるのは正確ではありません。

疲労感には、注意の持続、心理的な負担、睡眠、身体活動など、さまざまな要因が関係しています。

そして心理的な緊張は、呼吸や筋肉の状態にも影響することがあります。

つまり、

身体を動かしていなくても、心身はさまざまな活動を続けている

ということなのです。

 東洋医学から見る「気」と疲れ

東洋医学では、身体の活動を考えるうえで「気」という概念を大切にしています。

気は、生命活動を支える働きを説明するための伝統的な概念です。

現代医学でいうカロリーやATPなどのエネルギーと、そのまま同じものではありません。

東洋医学では、疲れやすさや元気の出にくさなどを考える際に「気虚」という状態を参考にすることがあります。

また、五臓のうち「脾」は、飲食物から身体を養う働きと関係づけられています。

ここでいう脾も、解剖学的な脾臓そのものではなく、東洋医学独自の概念です。

こうした考え方からは、

「どれだけ頑張れるか」

だけではなく、

「どのように身体を養い、休ませているか」

という視点が見えてきます。

疲れやすさを考えるとき、活動量だけでなく、食事や睡眠、休息の取り方にも目を向ける。

これも養生の大切な考え方のひとつです。

 オステオパシーでは、身体のどこを見ていく?

オステオパシーでは、身体をひとつのまとまりとして観察する考え方があります。

たとえば肩の緊張が気になる場合でも、肩だけに注目するとは限りません。

胸郭の動き。

背骨や骨盤の動き。

呼吸の仕方。

身体を支えるときの筋肉の働き。

こうした要素を含めて、身体全体の状態を見ていくことがあります。

ここで大切にしたいのは、

「硬いところを見つけて、そこを緩めればよい」だけではない

という視点です。

なぜ、その場所に力が入っているのか。

どんなときに緊張しやすいのか。

ほかの場所が動くと、その緊張はどう変化するのか。

身体を観察することで、日常生活の中にある負担のかかり方に気づくきっかけになることもあります。

 疲れやすいときこそ、「頑張り方」を観察してみる

疲れを感じると、

「もっと体力をつけなきゃ」

「運動不足だからかな」

「休み方が足りないのかな」

と考えることがあります。

もちろん、適度な運動や十分な睡眠は大切です。

でも、それだけでなく、

「普段、自分はどんなふうに身体を使っているんだろう?」

と考えてみるのもひとつです。

たとえば、

仕事に集中すると肩に力が入る。

考え事をすると呼吸を止めがちになる。

休憩中もスマートフォンを見ながら情報を追い続けている。

こうした自分の習慣に気づくことが、過ごし方を見直すきっかけになります。

まずは、無理に変えようとしなくても大丈夫。

今の自分を観察するところから始めてみましょう。

 休むことは、何もしないことだけではない

休息というと、横になったり、眠ったりすることを思い浮かべるかもしれません。

もちろん、それらも大切な休息です。

一方で、長時間座り続けたあとに少し歩くことで、身体が軽く感じられることもあります。

考え事が続いたあとに外の景色を眺める。

同じ姿勢が続いたら、立ち上がって身体を動かす。

静かな場所で、ゆっくり過ごす。

こうした時間も、心身の負担を切り替えるきっかけになります。

東洋医学の陰陽という視点から眺めるなら、活動と休息、動と静のバランスを考えることにも通じます。

ただし、疲れが強いときに無理に動く必要はありません。

その日の体調に合わせて、休息や活動を選ぶことが大切です。

 「もっと頑張る」より、「余白をつくる」

何もしていないのに疲れる。

そう感じたとき、

自分の体力や気力が足りないと考えてしまうこともあるかもしれません。

でも、身体の中で何が起きているのかは、外から見える活動量だけでは判断できません。

姿勢を支える働き。

呼吸。

筋肉の緊張。

考え事や心理的な負担。

睡眠や食事、日々の生活習慣。

さまざまなものが重なりながら、今の身体の状態をつくっています。

だからこそ、

「どうすればもっと頑張れるか?」

だけでなく、

「今、どこで頑張りすぎているんだろう?」

と考えてみる。

身体に力が入っていることに気づく。

休憩の取り方を見直してみる。

自分に合った活動と休息のバランスを探してみる。

そんな小さな気づきが、日々の過ごし方を変えるきっかけになることがあります。

心と身体にスペースをつくる。

それは、何かを新しく頑張って増やすことだけではなく、

今ある負担を少し減らし、自分が心地よく過ごせる余白を見つけていくこと

でもあるのかもしれません。

 ※疲労感には、貧血、甲状腺の病気、睡眠障害など、さまざまな医学的要因が関係することもあります。十分に休んでも改善しない疲労や、日常生活に支障が出るほどの疲れが続く場合は、医療機関への相談をご検討ください。

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